2018/12/14

症例「更年期に伴う不安感、動悸」

↑ぷっくりふくらんだ蕾。
寒さの中、凛としながらも可愛らしい姿、とても愛おしくなります。
 
 
50代女性。
半年ほど前、大きなストレスをきっかけに発症。
咽のつまり、動悸が常にあり、突然スイッチが入ったようにささいなことにも不安や恐怖を感じる。
ストレスに強いほうだと思っていたが、毎日のように不安や恐怖を感じることがとてもつらく、自分じゃないよう。時に精神安定剤服用しているが、できる限り飲みたくない。不安を感じると、左胸のあたりから左腕に違和感を、ひどくなるとしびれを感じる。
寝つきが悪く、夜中2時頃までは自力で頑張るが、翌日疲れがとれないため、現在は睡眠導入剤使用。
心電図などの検査を受けるが、異常はなく、抗不整脈薬内服したが動悸は不変。
 
<治療と経過>
大きなストレスから肝気の強い停滞がおこり、心の臓にまで波及、そこへ更年期の腎の弱りも重なったため、より停滞が強くなったと考え、腎の臓を補いながら、肝の臓と心の臓の気を巡らせる治療を行う。
症状が酷く、日常生活もままならない状況であったため、当初は週2回の治療、ある程度安定してからは週1回の治療を行う。
初診時から、主訴が軽減する。その後、少しづつ症状が改善、4か月後には念願の海外短期留学ができるまでに。
1年後にはストレスがかかってもほとんど症状が出なくなり、良く眠れるようになる。
現在も体調管理のために通院中。
 
<考察と説明>
更年期になると、成長・発達・生殖・体内の水分管理を担う腎の臓の働きが弱くなります。東洋医学では、五臓六腑は互いに助け合い、機能していると考えているため、この腎の臓の弱りは他の臓腑へも影響をきたします。
腎の臓そのものの弱りの症状としては、閉経、腰痛、足のむくみ、夜間尿などがみられますが、他の臓腑への影響もあるために、様々な症状が出現します。
どのような症状がでるかは、その方の体質や生活習慣などによって異なります。
この患者さんの場合は、主に不安感や動悸など心の臓に影響がでました。
今までは平気だったストレス(精神的、肉体的)に様々な影響を受けるのは、身体が大きく変化する時期だからです。
東洋医学では、心と体は一体であると考えます。体の不調は精神へも影響し、今までの自分では考えられなかったような感情を抱くことになります。
このような時は、無理に精神をコントロールしようとしても思うようにならず、より苦しくなってしまいます。体が良くなれば、精神も安定します。
 
女性は誰もが迎える更年期。健やかに乗り越えて、溌剌とされているお姿に喜びもひとしおです。
鍼灸の力を信じ、根気よく治療を続けてくださったことに感謝します。