2018/10/15

症例「倦怠感と食欲不振」

↑天高く馬肥ゆる秋。
お元気になり、秋を満喫できるようになられてよかったです。
 
 
50代女性。
夏の間、多忙で気を使うことも多かった。
夏の終わりに風邪(咽痛、高熱、夜も眠れないほどの酷い咳)をひき、解熱剤・抗生剤・咳止め薬で熱は下がるが、仕事や家事をこなすのもつらいほどの異常な倦怠感が2週間ほど続いている。
また、胃もたれ、下痢もあり、食欲も低下している。
その他、口の中が苦く乾いている、めまい、寒気と暑さどちらも感じる。
 
<治療と経過>
多忙な上に、今年の異常な暑さも重なり、気血が消耗しているところに、
風邪をひき、現在もその邪が残っている状態。
特に、顕著な胃腸症状が見られたために、脾胃を補いながら、熱をとり、気を巡らせながら残っている邪を除去する治療を行う。
治療後に、胃がすっきりする、口の渇きがおさまり、倦怠感がましになる。
その後、食欲が改善し、倦怠感がなくなり、翌日には通常通りに仕事をこなせるほど元気になりました、との報告を受ける。
 
<考察と説明>
東洋医学では、病の発症原因を内傷(ストレスなどの精神面、飲食や運動の不摂生など)と、外感(暑さ、寒さ、乾燥、湿気など。一般的な風邪やインフルエンザも含まれます)に分けて考えます。
この方は夏の暑邪による外感病でした。
ひとことに風邪といっても、外邪の性質や強さ、その人の体質や風邪を引いた当時の体調などによって、症状や治り方は全く違ってきます。
この方の場合は、夏の暑さと多忙が重なり、気や血を消耗、脾胃の弱りがあったところに
風邪をひいたために、なかなか治らずに風邪が体内に停滞して様々な症状を引き起こしていました。
このように正気の弱りがある場合は、汗をかかせるなどの強い治療は、
より悪化させるおそれがあります。そのため、弱った部分を補いながら、ゆっくりと邪を外へ出す方法を用います。正気が充実してくれば、免疫力が向上し、おのずと風邪は治っていきます。
 
ただ症状を抑えるのではなく、病の根本原因にアプローチし、自然治癒力を生かす東洋医学の素晴らしさを実感した一例でした。