2018/9/27

症例「痒みを伴う皮膚症状」

↑秋分を過ぎ、紅葉が少しづつ始まりました。
 
 
40代女性。昨年8月末から、臀部が衣服にかぶれたことをきっかけに、皮膚症状が全身に広がる。赤い発疹。発疹が繋がって皮膚が膨隆。痒みが強く、夜になるとかきむしって血まみれになることもあった。
一旦小康状態になるが、今年の3月再び臀部から全身に皮膚症状が広がる。
前回ほどの強い痒みはないが、毎日どこかが痒く、時にかきむしっている。
塗布薬、内服薬等は使用せず。
 
 〈初診時の皮膚の状態〉
1.下肢内側から足の甲にかけて、乾燥した発疹。
 全身の中でも特に膝から下が痒みが強い。
 赤く、乾燥している。掻いて出血した跡もあり。
2.夕食後(飲酒をした時。3食の中では夕食が最も量が多い)、
 肩や腕の内側にみみずばれのような皮膚の膨隆が点在する。
 痒み、赤みはない。
3.腹部、背部に、衣服(化学繊維)や髪の毛があたる部分に痒みを伴う発疹。
 特にゴムなどにより圧迫がある部分が酷い。
 
〈治療と経過〉
主に脾の臓が弱ったことにより、身体に熱邪(身体にとって余分な熱)と、湿邪が生じ、
それらが皮膚に停滞して発生したと考え、脾の臓を補いながら、邪熱をとる治療を行う。
4診目には、9割の症状が改善し、痒みを忘れている日が増加。
 
〈考察と説明〉
東洋医学では脾の臓は、胃の腑と共に西洋医学で言う消化器のような役割をしていると考えられています。
脾の臓が弱ると、飲食物から充分な気血を作り出すことができません。
この患者さんの場合は、特に陰血が足りず、皮膚を潤すことができずに、また相対的に陽が盛んとなり、乾燥を伴う下肢の皮膚症状が出現しました。痒みが強い、赤みがあるのは、熱があるためです。
みみずばれのような皮膚症状は、脾の臓が飲食によって生まれた水湿をうまく運化できないために、生じたと考えます。赤みや痒みが見られないのは、熱ではなく、水湿の停滞だからです。
また、脾の臓が弱ることにより、肝の臓と脾の臓のバランスが崩れ、肝気が昂ぶり、衣服などに過敏に反応するようになったと思われます。
 
 
痒みは痛みと同様、本人しかその辛さがわかりません。
また、強い痒みは、睡眠の妨げになったり、集中力が低下したり、イライラしたり、
日常生活にも支障をきたします。
皮膚の症状は外見的にも影響を及ぼすので、とてもつらいものです。
 
3種類の皮膚症状も根本原因は脾の弱りでした。
このように、根本原因に対してアプローチできるのが東洋医学の素晴らしさです。
1年間悩んでいた症状が早期に改善し、喜んでおられる患者さんの笑顔を見れたことを
とても嬉しく思います。