2018/9/24

芸術の秋

先日、八ヶ岳の麓、山梨県北杜市にある平山郁夫シルクロード美術館へ行ってきました。
 
平山郁夫さんは、シルクロードをテーマに旺盛に創作活動を続けられましたが、
実は私には、忘れられない平山さんの絵の記憶があります。
 
1985年の筑波博覧会会場に展示されていた、壁画「平和のキャラバン」です。
シルクロードをラクダに乗って旅するキャラバンが柔らかいタッチで描かれていました。
当時私は小学生でしたが、壁画の大きさに圧倒されたと同時に、異国情緒あふれる神秘的な雰囲気のこの絵は、脳裏に焼きつき、今でもよく覚えています。
「平和のキャラバン」は、現在広島の平和記念公園に展示されているそうです。
 
シルクロード美術館で一番印象に残ったのは、
80畳ほどの広さの部屋一面に展示されていたいくつものシルクロートの絵でした。
灼熱の太陽を浴びて進む、昼のキャラバン。
それに対をなす、コバルトブルーの空に光る月の明かりを頼りに進む、夜のキャラバン。
過酷な自然環境、盗賊などの脅威にさらされながらも、
ただ黙々と進むキャラバンの姿からは、
限りなく強い生命力と、困難に負けずに自分たちの道を一歩一歩進みゆく強い意志を感じ、
とても勇気づけられました。
 
↑「パルミラ遺跡を行く」 月の光に浮かび上がる遺跡が幻想的。
 
 
それと対照的なのが日本の風景画でした。
平山郁夫さんが、
 
「過酷な自然環境に耐えながら、生活を切り開いてきた大陸の文化とは違い、日本人は古代から自然と調和するように生きてきました。
シルクロードの乾燥した砂漠地帯を旅して帰ってくると、私は無性に日本の潤沢な絵が描きたくなります。」
と書かれているように、奥入瀬渓流や、瀬戸内の海などの絵を見ると、
心がすーっと潤っていく気がしました。
 
 
↑「奥入瀬渓流」紅葉にちらつく雪。東北の冬の訪れと、どこまでも清らかな渓流の流れ。
 
 
この対照的な異なる文化、どちらをも愛した平山郁夫さん。
どちらも思う存分堪能しました。
 
八ヶ岳山麓の澄んだ空気の中、贅沢な「芸術の秋」でした。
 
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