2024/1/20

症例「中学生の腹痛・嘔気」

↑足元に野イチゴたち。
 
 
中学3年生女子(初診時)
夏休み明けから胃の気持ち悪さが1か月ほど続き来院。
小児科で内服薬処方されるが症状改善せず。
朝起床時、朝食後、夕食後、運動後に特に感じるため、陸上部(短距離)は休む。
これとは別に、左腹部に痛みを常に感じ、時々ギューッと強く痛む。
排便とは無関係。
 
<鍼灸>
夏の間、陸上部の練習を頑張り、発汗が多く、冷飲も多かったことより、脾の臓と胃の腑(西洋医学の胃腸)を弱らせたことに加え、ストレスにより肝の臓の気が腹部で停滞し、症状を引き起こしたと考え、肝の臓の気を巡らせながら、脾の臓の働きをよくする鍼を行う。
 
<経過>
3診察目には嘔気はおさまるが、腹痛は続く。
下肢の冷えがひどく、鍼に加え、下肢の脾の臓のツボにお灸を行う。
当初は全く熱さを感じないほど冷えきっていた。
鍼灸を続け、灸の温かさを感じるにしたがって、腹痛の頻度が軽減していく。
(灸の温かさを感じる→ツボの状態が良くなっているということ)
9診目にはほとんど腹痛、嘔気を感じなくなり、無事に高校受験も合格。
高校入学後、環境の変化からか、再度軽い症状が出現したが、2回の鍼灸で改善。
 
<考察と説明>
脾の臓が弱ることには、様々な原因がありますが、冷飲食はその原因のひとつです。
また、夏場の発汗過多も、胃腸を弱らせ、秋になって症状がでることがあります。
そこに、受験などの様々なストレスが加わったことが、今回症状を発症した理由であると考えました。
また、中学時代は思春期に入り、女子は月経が始まります。
精神、身体が大きく変化するこの時期には、今までになかった症状が出ることがあります。
一方で、成長のエネルギーを持つ時期というのは、回復も早いということでもあります。
本人の持つ自然治癒力を活かす鍼灸は、症状改善だけではなく、より健やかな成長への大きな一助になると思います。
 
彼女は今も、体調管理のために月に1度程度来院しながら、元気いっぱいに高校生活を送っています。
彼女らしく、頑張ってほしいと思います。
 
 
※同じ症状であっても、東洋医学的にはおひとりおひとり発症のメカニズムは異なります。
そのため、同疾患、同症状であっても、症状緩和に必要な鍼の回数は、その方によって異なります。