2023/1/10

症例「妊娠中の湿疹と安産希望」

↑色とりどり
 
 
30代女性。
初診時、妊娠35週。
妊娠初期から、下腿に痒みを伴う虫刺され様の湿疹が点在。
一旦改善するも、再度悪化し、腹部、胸部にも出現。
夜入浴後に悪化し、掻くと出血する。
皮膚科から、妊娠中でも使用できる軟膏が処方され、痒みが強い時に塗るようにしているが、改善されず。
皮膚症状の改善と、安産となるよう体調を整えたいと来院される。
(初産のため、不安あり。)
 
<鍼灸と経過>
肝の臓、胃の腑の経絡上に湿疹があり、
身体を温めると痒みが出る、舌の赤みが強く乾燥している、冬でも冷たい飲み物を欲する、肝や胃のツボに熱の反応があることなどから、肝の臓、胃の腑の熱を取る鍼灸を行う。
妊娠中であることから、鍼をする場所や鍼を置く時間は、脈を見ながら、慎重に調節。
数回の鍼灸で徐々に湿疹が改善。
胎児の体重も順調に増加し、予定日2週間前には、産婦人科医から「いつ生まれても大丈夫。」
と言われる。
脈やツボの状態も良く、気血の巡りを良くする鍼灸を行う。
その後、予定日より早く、無事出産したとの連絡。
促進剤使用せず、スムーズな出産だったとのこと。
 
<考察と説明>
この方は、肝の臓の気血が停滞しやすい体質でした。
その停滞が長期に続くと、邪熱(身体にはよくない熱)を生み出します。
それが胃の腑にも波及し、湿疹を発症したと思われます。
また、妊娠中は胎児を育てるために腎の陽気が盛んになりますので、より邪熱を生み出しやすくなったと考えました。
 
妊娠初期から出産まで、女性の身体は大きく変化します。
どの時期においても、その方の体質、妊娠中の身体の変化に応じて、鍼灸治療が可能です。
そして、お母さんの体調を整えることが、結果として、赤ちゃんの健やかな成長を促し、安産へと繋がります。
 
ご本人は初産のため、出産に対する不安が大きかったようですが、体調が良くなり、無事に出産を迎え、本当に嬉しく思います。
元気な赤ちゃん誕生、おめでとうございます。
 
 
※同じ症状であっても、東洋医学的にはおひとりおひとり発症のメカニズムは異なります。
そのため、同疾患、同症状であっても、症状緩和に必要な鍼の回数は、その方によって異なります。