2021/6/2

症例「子宮内膜症、妊娠希望」

↑こぼれんばかりに咲いています
 
 
初診時、36歳、女性。
20代後半から、月経痛が酷くなる。
月経量も多くなり、血塊が混じるように。
子宮内膜症(チョコレート嚢腫)と診断され、月経痛、月経量コントロール目的で数年間ピル内服。
結婚後、妊娠を希望するため、初診より数カ月前からピル内服をやめたため、再び月経痛が酷くなる。
月経痛軽減と、妊娠のため身体を整えることを目的に来院される。
 
月経痛は、下腹部と腰部。強い鎮痛剤を数日服用。
鎮痛剤がなければ、寝込むほどの痛さ。
 
<その他>
20代、甲状腺癌で手術。
ストレスがかかると胃が重く、食欲減退する。
やや軟便、2,3ヵ月に一度、酷い腹痛と下痢。
 
<鍼灸>
子宮内膜症発症前に強いストレスがあったことより、肝の臓の働きが弱まり(肝の臓には気を巡らせる疏泄作用がある)、気が停滞、それが長期化することで、血の停滞を引き起こした。
また、脈やツボの状態、月経痛が腰部にもあることより、腎の臓の弱りが、
軟便、下痢傾向より脾の臓の弱りが軽度見られる。
気血の巡りをよくするとともに、腎の臓や脾の臓の働きをよくする鍼灸を行う。
週1回の治療を行い、波はありながらも徐々に鎮痛剤の強さや量が減っていく。
鍼灸開始約1年後、妊活に取り組むため婦人科にて検査。
自然妊娠は難しいかもと言われるが、本人は不妊治療はしたくないとのこと。
この約一カ月後、自然妊娠にいたる。
現在、妊娠8ヶ月。
出産に向けて鍼灸継続中。
 
<説明と考察>
酷い月経痛や月経時に血塊が混じるなど、血瘀といって血が停滞している状態が見られました。
子宮内膜症や子宮筋腫の多くは、この血瘀が関連していると東洋医学では考えられています。
気の停滞よりもさらに停滞が進んだ状態です。
主に肝の臓を中心に気と血の巡りをよくする鍼灸を行いましたが、この患者さんのように脾の臓や腎の臓の弱りがあると、肝の臓の働きにも影響を与えるため、ここもしっかりと立て直す必要がありました。
東洋医学では、五臓六腑は単独で働いているのではなく、互いに連携していると考えます。
そのため、例え肝の臓の問題で気滞血瘀に至っていても、問診やツボ・舌・脈の状態から他の臓腑の状態を見極めることが必要となります。
 
患者さんはとても優しく責任感が強い方です。
ご自身の身体のことや仕事のことなど、様々悩みを抱えることもありながら、根気よく鍼灸を続けた結果、難しいと言われながらも自然妊娠にいたり、本当に嬉しく思います。
 
 
※ひとことに、子宮内膜症と言っても、東洋医学的にはおひとりおひとり発症のメカニズムは異なります。
そのため、同疾患、同症状であっても、症状の緩和に必要な鍼の回数は、その方によって異なります。