2020/12/19

症例「不眠」

↑ふと足元を見ると。。。。
 
 
40代女性。
今年4月から寝つき悪い日が増える。
コロナ感染拡大の影響で不安や心配が多かった。
緊急事態宣言解除後から、寝つきがどんどん悪くなり、7月には眠れる日がほとんどなくなる。
就寝時間になっても眠気が来ずに、ギラギラした感じがする。
同時に、手足が熱くなり胃がムカムカする。
日中も眠くならず、横になっても眠れない。
睡眠導入剤を内服すると眠れるが、薬に頼らずに眠りたいと来院される。
 
 その他の症状・・・坂道で動悸・息切れ、足がむくみやすい。
出産後から、月経後身体がだるくなる、胃がムカムカする。
 
<鍼灸>
診察したところ、脈が細い、舌の色が薄い、血に関係するツボの反応などから、血が不足する「血虚(けっきょ)」という状態でした。動悸や息切れ、月経後の疲れなどは血虚によるものであると考えます。
それに加え、コロナ感染拡大の影響によるストレスにより、肝気が昂ぶった状態が続いたことから不眠に至ったと考え、血を補いながら肝の臓の気を巡らせる鍼灸を行いました。
3診目頃より、眠れない時のギラギラした感じはなくなり、眠気は感じるようになるが、布団に入っても眠れない。
9診目頃より、睡眠薬なしで眠れる日がでてくる。
この頃より、不正出血が続く。婦人科受診するも特に問題なし。
8月の酷暑により脾の臓を傷めたことによるものと考え(脾の臓には統血作用といって、出血を防ぐ働きがあります。)、脾の臓の働きを良くする鍼灸を行う。
15診目。不正出血なく、月経前後の不調も軽減。睡眠状況もよい。
 
<考察と説明>
しっかりと眠るためには、身体の陰陽のバランスがとても大切です。
眠るというのは陰の時間であり、起きて活発に活動するのは陽の時間です。
このバランスが崩れると、寝付けない、途中で何度も起きる、眠りが浅く夢ばかり見るなど、睡眠に問題が生じます。
この患者さんの場合は、もともと血虚の状態であり、陰が不足していました(血は陰に属する)。
そこへ、不安や今後の心配などのストレスが加わったことで、肝気が昂ぶり(陽の状態)、結果として陰より陽が勝ってしまったことが不眠に繋がったと考えます。
また、脾の臓(胃腸の働き)が弱ると飲食物から血を作り出すことができなくなります。
このことと、不正出血が続くことは、ともに血虚を助長させてしまいます。
このため、血を補いながら、血虚の原因となっているこれらの症状も改善させる必要がありました。
 
睡眠は、日々の疲れをとり、活力を養うとても大切な時間です。
眠れるようになるとともに、その他の不調も改善され、とてもお元気になられました。