2019/11/18

症例「ホットフラッシュ」

↑薄紅色に少し紫がかった綺麗なダリア。コロコロしていて手毬みたいです。
 
 
50代女性
閉経前からイライラしやすく、のぼせやホットフラッシュ(暑くなくても、突然カーっと上半身、特に頭部が熱くなり、多量の汗が出る。)が見られるようになり、ホルモン剤の投与を行う。
ホルモン剤投与中はホットフラッシュがなくなったが、投与をやめると再度出現。
以降約7年ほど、毎日頻回に起きるホットフラッシュに悩まされる。
 
その他の症状・・・不眠、ストレスで下痢や胃の不快感、腰痛、目の疲れ、肩こり
 
<鍼灸と経過>
更年期の腎の臓の弱りに加えて、過労や睡眠不足などによる正気の弱りがあり。
さらにそこへストレスが加わり肝の臓の働きが悪くなり、肝気上逆といって本来は全身をくまなく巡っているはずの気が、身体の上部に突き上げてホットフラッシュが起きたと考える。
まずは正気の弱りをしっかりと立て直すことを目標に鍼灸を行う。
鍼灸を始めて1か月ほどたつと、気力や体力がついてきたことを患者さんが自覚されるとともに、
脈、舌や腹部などの体表所見も良好になる。
また、カーっと上半身が熱くなって出る発汗から、じわじわとかく汗に変わり、汗の量が減る。
鍼灸を始めて約3ヵ月ほどで、ホットフラッシュのことを忘れるくらいに頻度が減少。
現在も体調管理のために鍼灸を継続。
 
<説明と考察>
暑い時に発汗するのは、正常な身体の働きです。
ただ、暑くもないのにこのように多量の汗をかくのは、様々な原因が考えられます。
この患者さんの場合は、肝気上逆が直接の原因でした。
東洋医学で肝の臓は、緊張と緩みのバランスをとったり、全身に気を巡らせたりする働きがありますが、緊張状態やストレスが長く続くと、これらの働きがうまくいかず、気が停滞したり、上部にばかり気が突き上げたりする結果、めまいや頭痛、のぼせ、イライラ、ホットフラッシュ、などの症状を引き起こします。
ただ、この患者さんの場合は、肝の臓の問題だけでなく、腎の臓の弱りや、睡眠不足、過労、多量の発汗などにより気血ともに消耗された状態でした。
東洋医学では、五臓六腑は単独で存在するのではなく、それぞれの臓腑が助け合いながら機能をはたしています。
このように弱りが大きい場合は、それらが改善されなければ、肝の臓の働きもよくなりません。
まずは、腎の臓や気血の弱りを立て直した後、肝の臓の働きをよくする鍼灸を行いました。
 
ホットフラッシュは、突然多量の汗が出るので、とても不快なものです。
仕事中や、外出中なども関係なく起きるので、ホットフラッシュ自体も大きなストレスになります。
長年悩んでおられた症状がこのように改善したことは本当に嬉しいことです。
また、治療経過中にぎっくり腰も発症されましたが、そちらも鍼灸で改善されました。