2018/8/5

その人らしい旅立ち

旦那さん、空の上からAさんを見守っていてくださいね。
 
 
 
先日、ある患者さん(Aさん)の旦那さんが亡くなりました。
90歳、腎臓癌で闘病しておられました。
 
Aさんは、旦那さんと2人暮らしでした。
ご本人の強い意志があり、ディサービスなどの通所介護は利用せず、
入院もしませんでした。
Aさんがおひとりで介護を担い、旦那さんの闘病生活を支えていました。
ここ数年はほとんど寝たきりで、
特に今年に入ってからは食事の量、会話も減り
徐々に病状は悪くなっていました。
そして梅雨のころ、ご自宅で亡くなりました。
腎癌と診断されて23年間、医師もその生命力にびっくりしていたそうです。
 
Aさんは我慢強い方で
あまり周囲に愚痴を言うこともなく一生懸命ご主人を支えられていました。
私がお身体を診たときには、
緊張が長期間続いていることがはっきりと現れていました。
鍼灸をしながら、Aさんは、不安や葛藤、そしてお正月の楽しかった団欒など
ぽつりぽつりと話してくださいました。
言葉の根底に、旦那さんへの深い深い愛情を常に感じました。
 
先日、四十九日を終えたAさんと電話でお話しました。
「先生、主人らしい最期でした。
病院でなく、家で死にたい。子供達には迷惑をかけたくない。
それを最期まで貫きとおしました。
もし、この猛暑に主人の介護があったら
私は倒れていたかもしれません。
暑くなる前に亡くなったのも、私への思いやりだったのでしょう。」
 
私は旦那さんとお会いしたことはないのですが、
住み慣れた我が家で、家族に見守られながら
静かに息を引き取った姿がまるで目に浮かぶようでした。
 
夫婦になって60年。
闘病23年。
その年月、さまざまな思い、
家族の愛の深さ・・・
 
簡単に言葉になんてできません。
 
私はただただご冥福を祈り、合掌しました。