2023/4/17

症例「帯状疱疹後神経痛」

↑ピンクの毬がたくさん。。。
 
 
60代男性
左胸部から脇、背部にかけて帯状疱疹発症。
痛みが激しく、抗ウイルス薬、ステロイドとともに、鎮痛剤内服する。
水疱が潰れ、かさぶた状になっても、痛みがおさまらず、発症から1か月以上続く。
鎮痛剤は効果なく、神経ブロックを勧められるが、鍼がいいと知人に聞き、来院される。
 
 
初診時は、チクチク、ピリピリした痛みが常時あり、時々鷲掴みにされるような激痛が走り、思わず声が出るくらいである。
夜も痛みがあるため、眠りが浅く、何度も目が覚める。
 
主訴発症以前、仕事が忙しく睡眠不足であった。また、ストレスから喫煙量が増えていた。
喉がよく乾き、冷飲を欲する。赤ら顔。
 
<鍼灸>
ストレスが長期にわたり、肝の臓の疏泄(全身に気血を巡らせる)機能が低下し、気滞、血瘀(血の停滞)となり、また邪熱といって、身体にとっては不要な熱を溜め込んだことにより発症したと考えました。
また過度な喫煙や睡眠不足もこれを助長させたと考えます。
口渇、冷たいものを欲する、赤ら顔は、身体に熱が籠っているひとつの兆候です。
また、夜間に激しく痛みが出るのは、気の停滞だけでなく、血の停滞も引き起こしているからです。
肝の臓の気を巡らせながら、邪熱を取る鍼灸を行いました。
3診目から、痛みが少しづつ減少、7診目には夜よく眠れるようになる。
1ヵ月半後には、咳をした時、何かが強く触れた時に痛みを少し感じる程度となる。
その後、持病の坐骨神経痛が再発したため、腰痛や下肢の痺れに対する鍼灸を行った。
 
<説明と考察>
帯状疱疹は、東洋医学では「纏腰火丹(てんようかたん)」と言われ、古い医学書にも出てくる病です。
西洋医学では、体内に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウィルスが、免疫力が低下した時に再活性化され発症されるとされています。
鍼灸では、あくまでもご本人の身体や精神の状態から、どのようなバランスの崩れが病を引き起こしたのかを考え、それに対して治療を行います。
 
帯状疱疹の痛みは、非常に激しい場合が多く日常生活にも支障をきたします。
これが長期に続いていたのは、本当にお辛かったと思います。
この方が、痛みから解放された時の笑顔は、忘れられません。
 
また、帯状疱疹発症直後に来院される方もおられますが、早期から鍼灸を行うことで、回復がスムーズで早いという印象があります。
 
 
※同じ症状であっても、東洋医学的にはおひとりおひとり発症のメカニズムは異なります。
そのため、同疾患、同症状であっても、症状緩和に必要な鍼の回数は、その方によって異なります。