2025/7/25
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症例)筋膜損傷による大腿の痛み |
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![]() ↑青空に向かって元気いっぱい、夾竹桃。 <初診時> 60代男性。 4年前、自転車に乗ろうとして、足を挙げた際、左大腿に強い痛みが走る。 以前から、手足にこむら返りをよく起こしていた。 筋膜損傷と診断され、鎮痛剤と湿布を処方される。 以後、階段昇降、坂道の歩行、車に乗車する時などに痛みが続いている。 3か月前から右大腿にも同様の痛みが出現。 両大腿に痛みがあり、開脚、足の挙上、力をいれることが困難。 足を引きずるようにして歩いている。 初診時1年前にコロナ感染、その後、咳が続いている。 長時間喋っている時、夜間入眠中などに空咳が続く。 <鍼灸と経過> 肝の臓の弱りにより、血が不足。 十分に筋を養うことができずに、筋を損傷したまま、4年間痛みが続いている。 左足をかばい、右足に負担がかかることで、右足も損傷。 肝の臓の働きを高め、血を補う鍼灸を週2回行う。 4診目、痛みはあるが、階段昇降、歩行が楽になったと感じる。 8診目、初診時の痛みを10とすると、3まで減少。寝返りや歩行がスムーズ。 夜間、咳で起きることがなくなった。 11診目、階段昇降、歩行ともに痛みなく、小走りができるようになる。疲れてくると痛みが出現。 咳が出なくなった。 以降、週1回のペースで鍼灸を継続。 3か月後には、ウォーキングを1時間しても痛みがでなくなり、頻回に起きていたこむら返りがなくなった。 <説明と考察> 東洋医学の五臓六腑のひとつ、肝の臓の働きのひとつに「蔵血」機能があります。 これは、血を貯蔵し、必要な場所に血が巡るよう調節をする働きです。 肝に変調が起こると、血が不足したり、逆に出血しやすくなったりします。 また、肝は、目・筋・爪と関りが深く、蔵血機能が失調すると、この方のように、こむら返りを起こしたり、些細な動作で筋を損傷したり、またその損傷が治りにくくなります。 また、血は陰に属し、体内を潤す津液と関係が深いため、血の不足から気管や喉を潤すことができずに空咳が続いていたと考えます。 そのために、肝血を補う鍼灸をすることで、結果として咳もおさまったと考えます。 東洋医学では、人間の心身を内臓や器官に分けて考えながらも、ひとつの統一体として、全体を診ます。 このように、一見関係のない症状のように見えても、根本原因は同じことがあり、主訴(鍼灸来院のきっかけとなる主要な症状)の治療をすることが、他の症状の治療にも繋がるのです。 ※同じ症状であっても、東洋医学的にはおひとりおひとり発症のメカニズムは異なります。 そのため、同疾患、同症状であっても、症状緩和に必要な鍼の回数は、その方によって異なります。 |
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