2025/2/22

症例)乳癌、抗がん剤治療による倦怠感

↑足元を見れば。
そこには可愛らしい黄水仙が。
 
 
40代女性。
ステージ1の乳癌にて、手術。
術後、放射線治療を行い、その後ホルモン療法と、抗がん剤治療(内服を1年)中。
抗がん剤内服による倦怠感が強く、仕事を休むことも増え、日常生活に支障をきたす。
鍼治療を主治医に相談したところ、受けてよいと言われ、当院に来院される。
 
<鍼灸と経過>
肝の臓の気の停滞に加え、湿邪、熱邪、瘀血所見が見られる。
また、抗がん剤内服により、脾の臓、腎の臓の弱りが顕著。
そのため、脾の臓、腎の臓の気を増しながら、気血を巡らせる、湿邪や熱邪をとる鍼灸を行う。
当初は週に1回~2回、通院。
昨年秋からは、休職して、九州の実家で療養。
病院通院のために宝塚へ戻る際に、集中して数回の鍼灸を行う。
鍼灸をした後は少し元気になり散歩ができるようになる。
倦怠感はあるが、初診から2か月をピークに少しづつ倦怠感が軽減。
検査結果に問題なく、この2月で1年間の抗がん剤内服を終了する予定。
 
<説明>
北辰会の藤本蓮風先生は、癌の形成に、気滞(気の停滞)、瘀血(血の停滞)、湿痰、邪熱(体にとって余分な熱)の結びつきが関わっていると述べておられます。
特に気滞はこれらを接着剤のように結びつける役割をしています。
この方の場合は、もともと子宮内膜症で月経痛がひどかったなど、肝の臓の気の停滞から血の停滞(気滞、血瘀)があったところに、甘味・油物などの摂取過剰や便秘により、湿邪や熱邪を身体にため込んだ結果、癌の形成につながったと考えます。
また、何らかの原因で正気(生命力、抵抗力)が弱くなったことも背景にあったと思われます。
 
また、手術や放射線治療などの後に抗がん剤治療を行うことは、非常に正気を傷つけます。
が、癌は手術で取り除いたとはいえ、再発のリスクもあるため、ただ正気を補うだけでは、邪気(気滞・血瘀・湿痰・熱邪など)を助長させてしまい、逆効果となってしまいます。
また、邪気を取り除くにも、正気が弱い状態では余計に正気を傷つけてしまいます。
そのために、正気を補いながら、邪気を取り除く、このバランスがとても重要となります。
 このため、治療方針は、患者さんへの問診と共に、脈診や舌診などの体表観察所見から、毎回丁寧に見極める必要があります。
 
乳癌発症からその後の治療は、非常に精神的・肉体的に負担のかかるものであったと思います。
鍼を信用してくださり、淡々と治療に通い続けておられましたが、心の中には様々な不安やもどかしさなど、言葉にはできない思いを抱えていたのではないかと察します。
そのような日々を乗り越え、抗がん剤投与終了を迎えること、心から嬉しく思います。
 
3月から仕事に復帰、復帰後も鍼灸に通ってくださるとのこと。
鍼灸で体調を整えることが、癌の再発予防にもなります。
これからも、鍼で応援させていただきます。
 
 
※同じ症状であっても、東洋医学的にはおひとりおひとり発症のメカニズムは異なります。
そのため、同疾患、同症状であっても、症状緩和に必要な鍼の回数は、その方によって異なります。