2018/12/9

虚してる?実してる?

↑ナンテンの実。紅葉が終わり、木々の葉が落ちていくこの時期、鮮やかな赤い色は目を楽しませてくれます。
 
 
東洋医学では、様々なモノサシで現在の身体の状態を把握します。
まず大まかに、虚実、寒熱(冷えているか、熱に傾いているか)を把握したのちに、どこの臓腑経絡に異常があるか、何が不足していて、何が有余なのか・・・などなどいくつものモノサシで判断していきます。
 
このモノサシのひとつが虚実、つまり虚しているか実しているか、です。
これは、人間にもともと備わっている健康に保とうとする力・生命力(正気)と身体に悪いもの、健康を犯そうとするもの(邪気)のバランスを見極めるモノサシです。
正気が足りなくなった状態を虚、正気はあるが邪気がそれ以上に強くなった状態を実と呼びます。
 
まずは、問診である程度の虚実を見極めます。
生活の中で疲れはあるのか、それはどの程度なのか。主訴(一番つらい症状)は、身体を動かした方が楽になるのか、休息したら楽になるのか・・・などなど。
また、発汗、排泄、女性の場合は月経後に身体がすっきりと軽くなる場合は、正気は充実していると考えます。
 
実は、疲れているのに気が張っているためそれに気づかないとか、疲れていると思っていたのは気疲れで、肉体的には元気だった・・・ということもあるので、最終的には体表観察(脈、舌、ツボの状態)などもふまえて、総合的に判断します。
 
また、純粋に虚、純粋に実という方は少なくて、たいていの方は虚実が錯雑しています。その場合は、どちらのウェイトがより高いのか、どのくらい高いのかを見極めていきます。
 
こうして何をどのくらい補うのか、何をどれくらい瀉すのかを決めていきます。それによって、使用するツボや鍼の刺入の方法、深さなどが変わります。
 
そして、治療の過程、生活(活動と休息、ストレス、食事など)や気候、天気などに応じて変化していくので、診察毎にチェックする必要があります。
 
つまり、ひとりとして同じことはないですし、同じ人間でも時と場合によって異なるということです。
これが人間の妙なるところです。
が、考えてみれば当然と言えば当然ですね。。。
性格、個性がそれぞれ違うのと同じように、身体だってひとりひとり違いますし、変化し続けます。
 
その時、その人、その場によって違うことを前提とし、それに合わせた治療を行うことができる、それが東洋医学の素晴らしさだと思います。