2018/7/10

摂食嚥下障害を東洋医学で考える!

↑自宅のご近所にある中山寺の参道にむくげが咲いていました。
梅雨も明けて、いよいよ本格的な夏の到来です。
 
 
先日、所属する鍼灸学術団体「北辰会」の研修会で、「摂食嚥下障害を東洋医学で考える!」をテーマに20分ほどの講義を担当させていただきました。
 
なぜこのテーマを選んだかというと
近年、高齢化に伴い摂食嚥下障害が急増しており
それが原因で誤嚥性肺炎(間違って食物や唾液が気管や肺に入り肺炎をおこす)で亡くなる方も急増しています。
 
私は看護師として病院や施設で働き
摂食嚥下障害のために「美味しいものを自分の口で美味しく食べることができない」方のリハビリや誤嚥予防にも取り組んできました。
 
このような方に、そして予防のために
鍼灸師としてできることは?との思いが以前からあり、
今回はありがたくも講義の機会をいただいたので、
自分自身も勉強しなおすことにしたのです。
 
そもそも摂食嚥下障害とは
「食べ物を認識して口に入れて咀嚼(咬む)して、飲み込んで胃に送る」という流れの
どこかが障害されるために、スムーズに食べることができなくなることです。
原因は様々で脳、神経の病気、口腔や舌、食道、胃などの癌、高齢による筋力の低下などが多くみられます。
 
東洋医学的には
五臓六腑のうち肺の臓、腎の臓、肝の臓、脾の臓、胃の腑が深く関わります。
これらの臓腑が協力しあうことで
食べ物はスムーズに胃へと送り込まれます。
 
これらの臓腑のいずれかの異常があると
食べ物がスムーズに口から胃へと送り込まれない、
つまり摂食嚥下障害を引き起こすのです。
 
ではどの臓腑にどんな問題があるのか?
それを導き出すのが、問診や体表観察(脈診、舌診、腹診、背中や四肢のツボの状態)なのです。
 
今回の講義のなかでは、、実際に私が治療した患者さんの症例を紹介しました。
「食欲がない、飲み込みに時間がかかる(のどが痞える感じがある)、時々むせる」
という症状を持った方が、鍼灸治療の結果
「空腹感を感じるようになり、食欲が増えた結果体重増加がみられ、スムーズに食べられるようになった」
という症例です。
この患者さんが一番喜んでおられたことが「空腹感を感じるようになり、体重が増えた」ということでした。
それまでは、時間が来たら義務的に食べるという生活だったそうです。
「おなかすいた~」って感覚、これがあるからこそ、食べる喜びがひとしおなのです。
 
人間は飲食によって、生きるためのエネルギーを生み出します。
それが全身にくまなく行きわたり、気血は旺盛になり健全な心と身体が養われます。
そして、美味しものを食べると人は幸せな気持ちになります。
食べることは生きることそのものなのです。
 
鍼灸治療が、摂食嚥下障害で苦しんでいる方の一助となるように
そうでない方も、日々の健康管理で摂食嚥下障害の予防に繋がるように
 
これからも精進していきたいと思います。