2023/7/7

症例「冷えと倦怠感」

↑花火みたい。。。
 
 
60代女性。
2022年6月初診。
春先から、朝気温が低いと、身体の冷え(手首、首、背中、下肢全体)とだるさを感じる。
首や肩を中心に身体が何となく重い。
食欲なし(美味しいと感じない)
気持ちは動きたいと思うが、身体がついていかない。
気温差が身体に堪える。
葛根湯を飲むとその時だけ、少し楽になる(汗をかく)
 
<その他>
・冬の間、少し風邪気味かな、という時に漢方薬の麻黄湯を3度ほど飲んだ。
かなり汗をかいた
・入浴すると気持ち良いが、長く浸かると疲れる
 
<診断と鍼灸>
風邪をひいているときに見られるツボの反応が見られる。
また、下腹部から下肢の冷えが顕著で、腎の臓のツボに弱りが見られる。
 
腎の臓の陽気が不足(腎陽虚=じんようきょ)して、身体が冷えているのに加え、衛気(えき)が弱っており、慢性的に風邪をひいている状態であると考えられる。
衛気は、身体の表面を巡りながら外敵から身体を守る役割しており、衛気が弱くなる、または巡りが悪くなると、風邪をひきやすくなる。
腎の臓の陽気を高めながら、衛気を増す鍼灸を行う。
2診目、疲れる日が少し減ってきた気がする。
5診目、元気になってきたので、九州旅行へ。食欲が出てきて、よく食べた。
帰宅後、風邪をひく(鼻水、発熱)が、数日で治る
6診目、疲れが減少、旅行や仕事など身体がよく動いて嬉しい。
身体の中から温かくなるのを感じる
 
<考察と説明>
この方のように、衛気が弱り、防衛機能がうまく働かないと、気温差などによって風邪をひきやすくなります。風邪といっても、いわゆる風邪症状(発熱、鼻や喉の症状など)が出ないこともあり、ただ何となく寒気がして気だるく、食欲がないという場合もあります。
そして、衛気は腎の臓が中心となって生成されるため、ただ風邪だけを治すのではなく、腎の臓の機能をしっかりと高める必要があります。
麻黄湯や葛根湯は風邪の初期に使われる漢方薬ですが、この方のように体力が弱っている時は、無理に発汗させて疲れてしまう場合もあります。
 
ひとことに、疲れやすい、冷えていると言っても、すべての方に風邪が関わっているわけではありません。
東洋医学で「疲れ」や「冷え」の原因となるものは様々で、実際に問診をして、脈や舌、ツボの状態などを総合的に診ることで診断ができます。
 
この患者さんは、現在も2-3週間に一度、体調管理のために鍼灸を続けておられ、大好きな旅行を楽しまれるなど、とても元気にされています。
 
※同じ症状であっても、東洋医学的にはおひとりおひとり発症のメカニズムは異なります。
そのため、同疾患、同症状であっても、症状緩和に必要な鍼の回数は、その方によって異なります。